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冷凍サイクルの種類と特徴

蒸気圧縮式冷凍サイクル

 気体の冷媒を圧縮機で圧縮し、凝縮器で放熱し液化後膨張弁で低圧にし、蒸発気化させることにより冷却する。冷凍、空調分野で広く使用されており、単に冷凍機といえば蒸気圧縮式をさす場合が多い。冷媒としてフロン系、二酸化炭素、炭化水素、アンモニアが主に使用されている。

 蒸気圧縮式冷凍サイクルの基本構成とp-h線図上のサイクルを下図に示す。サイクルとしては、二つの等圧過程と断熱過程、等エンタルピ過程からなる。

ここで、エンタルピh は、内部エネルギu、圧力p、比容積vを用いて、次式で定義される。

h = u + pv

微分すると次式が得られる。

dh = du + pdv + vdp

一方、熱量Q は熱力学第一法則から次式で表される。

dQ = du + pdv

したがって

dh = dQ + vdp

が得られ、p-h線図を用いると、横軸の変化量が等圧過程では交換熱量、断熱過程では圧縮仕事量を表す。すなわち、

凝縮器での放熱量:Qh = h2 - h3

蒸発器での吸熱量:Qc = h1 - h3

圧縮機仕事   :W = h2 - h1

となる。したがって、蒸気圧縮式冷凍サイクルのCOP(成績係数)は

COP(加熱)=QhW =(h2 -h3 )/(h2 -h1)

COP(冷却)=QcW = (h1 -h3 )/h2 -h1)

 蒸気圧縮式冷凍サイクルの特徴は、減圧が不可逆変化である等エンタルピで行われることである。このために理論効率は冷凍サイクルの中でも低いが、圧縮機の効率とサイクルの効率は線形であり、実効率は各冷凍サイクルの中でも最も高くなる。

 

吸収式冷凍サイクル

 蒸気圧縮式冷凍サイクルの圧縮機の代わりに、吸収器と再生器の間で吸収剤を循環させ、再生器で加熱により冷媒を放出、吸収器で冷却により冷媒を吸収させて圧力差を設ける熱駆動型の冷凍サイクルである。水-臭化リチウムを用いたものは主として大型の空調機、アンモニア-水を用いたものは産業用冷凍機として用いられている。基本構成図とデューリング線図上の冷凍サイクルを下図に示す。

 再生器と吸収器を圧縮機と考えれば蒸気圧縮式と同等のサイクルになるが、水ー臭化リチウムを用いるシステムでは圧力差が数kPaと小さく、減圧はヘッド差で行われるために通常は膨張弁が記載されないことが多い。

 再生器、凝縮器、蒸発器、吸収器での熱交換量はほぼ等しく、理想的には加えた熱量に対し、同等の吸熱量と二倍の中間温度の放熱量となる。空調条件では90℃前後の熱で駆動でき、実機の効率は0.7前後であり、熱機関としての効率は高い。しかし、化石燃料を直接熱源として利用する場合、システム的な効率は低い。このため、再生器を多段化することにより効率の向上を図っている。現在、3重効用まで実用化されている。

その他の冷凍サイクル

・吸着式冷凍機
吸着材がガスを吸着、脱着時の発熱・吸熱を利用した熱駆動型の冷凍サイクルで、比較的低温で駆動することができる。連続運転する場合は2組のシステムを時間的に切り替えて行う必要がある。媒体としては水-シリカゲル。水素ー水素吸蔵合金などがある。
・スターリング冷凍機
スターリングサイクルを動力で駆動するもので、理想的な二つの等温変化と二つの断熱変化からなるカルノーサイクルとなる。極低温用としてはヘリウムが冷媒として使用される。
・磁気冷凍機
磁性体に磁界をかけると電子のスピンの方向が規則的にそろえられエントロピが減少し磁性体が発熱する。逆に磁界を取り去るとエントロピが増加し、温度が下がる。この現象を利用した冷凍サイクルで.理論効率はカルノー効率となるが、格子振動が大きくなる常温では効率が低くなる。