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効率向上策

 蒸気圧縮式冷凍サイクルは熱サイクルの中で唯一不可逆過程をもつサイクルで、システムとしての効率向上策は不可逆過程の損失低減にある。基本的には減圧過程でのガスの発生抑制とガスの膨張抑制であり、種種のサイクルが提案されている。

サブクーラ付冷凍サイクル

 ガスの発生抑制の最も簡単な方法は、膨張弁入口のサブクール量を大きくすることである。近年の冷凍サイクルは効率重視され、たとえば空調機のような空冷の機種では風量を大きくし、凝縮温度を低くする設計になっている。このために、サブクールはとりにくくなっているが、暖房運転、給湯のような昇温幅の大きい運転条件では有効な技術である。サブクール量と効率(逆カルノーサークルとの効率比)の関係を下図に示す。サブクール量を大きくすると確実に効率が向上する。サブクール量を大きくするためには、冷媒と冷却媒体を対向になるように流す必要があるが、空気を冷却媒体にするような場合、熱交換器前面に液冷媒を冷却するサブクーラを設ける手法がとられる。また、レシーバタンクを用いた冷凍サイクルではレシーバタンクの後にサブクーラの設置あるいは再び凝縮器に戻す手法が取られている。

図 サブクール量と効率

中間熱交換器付冷凍サイクル

 蒸発器出口のガス冷媒で凝縮器出口の液冷媒を冷却する手法で、基本構成図およびp-h線図上のサイクルを下図に示す。

図 中間熱交換器付冷凍サイクル

 凝縮器出口のサブクール量が増加し、質量当たりの冷却能力は増加するが、圧縮機入口の温度が上昇し、比容積が増加するために圧縮仕事が増加し、また、圧縮機容量が同一であれば冷媒の質量流量は減少する。このため、通常の冷凍サイクルでは、冷媒の比熱比により特性が大きく異なる。代表的なR32とR600aの中間熱交換器での交換熱量とCOPの関係を下図に示す。

図 交換熱量とCOPの関係

 R32は比熱比が大きく、中間熱交換器を設けると、圧縮機入口の比容積の増大により、単位容積当たりの冷却能力が減少、さらに圧縮仕事の増加により成績係数が低下する。比熱比の小さいR600aでは単位容積当たりの冷却能力の増加が大きく、圧縮仕事の増加割合も小さいために成績係数が増加する。このために、R600aを使用した冷蔵庫では一般に使用されている。また、比熱比は大きいが、高圧側が超臨界になるR744(二酸化炭素)を用いた冷凍サイクルでは、高圧側出口の温度を低下させることにより冷却能力が大幅に増加し、成績係数が増加する。

エコノマイザ付冷凍サイクル

 複数の膨張弁と気液分離器を設け、膨張過程で発生するガスを圧縮機の中間圧に戻すサイクルで、およびp-h線図上のサイクルを下図に示す。

 膨張過程で発生するガスを圧縮機の中間圧に戻すことにより低圧から中間圧に圧縮する動力が減少するのに加え、高圧側の圧縮機入口温度が低下し、比容積が減少するために圧縮動力が減少し成績係数が増加する。また、蒸発器と圧縮機が離れている場合、蒸発器の冷媒循環量が低下し圧力損失が減少する。エコノマイザー付冷凍サイクルはもともと多段圧縮を行うターボ冷凍機、圧力比の大きい低温用冷凍機に主に用いられている。