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Helmholtz型状態式

 Helmholtz型状態式はPVT 関係の代わりに、Helmholtzエネルギを無次元化した形で表したもので、理想気体の比熱を含め多くの精度の高い実測値が必要な反面、微分のみで他の熱力学的物性を導けることから関数形の自由度が高く、高精度の状態式として近年急速に普及した。

 単一物質の状態式は、HelmholtzエネルギA を気体状数R および温度T で無次 元化をした無次元化Helmholtzエネルギを、理想気体状態(添え字0)と同一の 温度での理想気体状態との差である偏倚関数(添え字r)に分けて式(2.1)で表される。

(2.1)


理想気体状態のHelmholtzエネルギ

 理想気体状態のHelmholtzエネルギΦ0 は次式で表される。

(2.2)

ここに

δ :無次元の換算密度(δ=ρ/ρ*)

ρ* :換算密度用係数。臨界密度を用いる場合が多い。

τ :無次元の換算温度(τ=T*/T)

T* :換算温度用係数。臨界温度を用いる場合が多い。

d0,d1:比エンタルピ、比エントロピを基準値に一致させるパラメータ。
      冷媒の基準値は0℃の飽和液の比エンタルピ、比エントロピをそれぞれ
      200kJ/kg、1kJ/kgKとする場合が多い。

d2, dk, ak, nk:理想気体状態の比熱から算出される係数。

理想気体状態の比熱は次式で表される。

(2.3)

 ここに

(2.4)

ck, ak, bk, tk :理想気体状態の比熱算出係数。

したがって、係数 d2 , dk ,nk は次式で表される。

(2.5)

(2.6)

(2.7)


Helmholtzエネルギ偏倚

Helmholtzエネルギ偏倚Φrは次式で表される。

(2.8)

 ここに

(2.9)

(2.10)

(2.11)

式(2.8)右辺第2項は臨界点ごく近傍の定容比熱、音速の挙動を補正するもので、一部の状態式(CO2のSpan and Wagnerの式、およびH2OのWagner and Prußの式)で使用されている。

混合時のHelmholtzエネルギ

 Helmholtz型状態式の混合則は複数提案されているが、ここでは、ISO-17584で採用されている式を用いる。混合時のHelmholtzエネルギΦmixは次式で表される。

(2.12)

Helmholtzエネルギの理想気体状態と偏倚関数は混合物の組成をxとすればそれぞれ次式で表される。

(2.13)

(2.14)

 ここに

(2.15)

(2.16)

(2.17)

(2.18)

(2.19)

Fij , Nk ,dk ,lk ,tk ,ζij ,ξij:算出係数

f3 , f4:混合時の比エンタルピ、エントロピを基準値に一致させるパラメータ

熱力学的物性値の算出

 状態式より熱力学的物性は次の関係式を用いて算出できる。

 ・圧力

(2.20)

 ・内部エネルギ

(2.21)

 ・比エンタルピ

(2.22)

 ・比エントロピ

(2.23)

 ・Gibbsエネルギ

(2.24)

 ・定容比熱

(2.25)

 ・定圧比熱

(2.26)

 ・音速

(2.27)

 ・混合物中のi成分のフガシティ

(2.28)