熱伝導率
熱伝導率は、熱移動に関連する物理量で、熱交換器の設計には不可欠なものである。粘度と同様に冷凍サイクルあるいはランキンサイクルのように動作温度範囲が広く、相変化を伴うような場合、気液で利用できる相関式が便利である。R744を例にとると次のような相関式が提案されている。
(1)Huberらの相関式1)
ここに
λ0:希薄気体の熱伝導率
Δλ:過剰熱伝達率
Δλc:臨界点近傍の補正項
希薄気体の熱伝導率、臨界点近傍の補正項、臨界点近傍の補正項は次式で整理されている。
・希薄気体の熱伝導率
ここに
Tr:対臨界温度 (T / Tc )
Lk:過剰熱伝達率
・過剰熱伝導率
ここに
ρr:対臨界密度 ( ρ / ρc )
B1,i, B2,i:係数
・臨界点近傍の補正項
ここに
Cp:定圧比熱
Cv:定容比熱
kB:ボルツマン定数
Tref :参照温度 ( 1.5 Tc )
η :粘度
RD , ν, γ:定数 ( RD = 1.02,ν =0.63, γ = 1.239 )
Γ, ζ0, \( \bar{q}\)D :係数
(2)Scalabrinらの相関式2)
ここに
Δλc :臨界点近傍の補正項
M :分子量
NA :アボガドロ定数
Pc :臨界圧力
R :ガス定数
ni, gi, hi :係数
臨界点近傍の補正項は次式で整理されている。
ここに
ai :係数
Huberらの相関式およびScalabrinらの相関式から算出したR744の飽和液、飽和ガスの熱伝導率を図1.1、臨界温度近傍の熱伝導率を図1.2に示す。
図1.1 R77の飽和液、ガスの熱伝導率
図1.2 臨界温度近傍の熱伝導率
両者の相関式の偏差は飽和液で最大3%、飽和ガスで最大7%である。熱伝導率の測定値は粘度よりさらにばらつきが大きく、相関に用いた主データの違いと推定される。両者の特徴は臨界点近傍の補正項にあり、Huberらは半理論式、Scalabrinらは測定値の相関で作成している。図1.2から分かるように臨界点直近ではHuberらの相関式から算出した値は、物理的にあり得ない挙動を示す。算出に用いた状態式3)の臨界点近傍の挙動が正しくあらわされていないために生じる現象である。
熱伝導率の相関式も、状態式あるいは粘度の相関式と同様に、三重点から超臨界までの幅広い温度、密度に適用できる相関式が提供されるようになってきている。しかし、物質が限られ、混合物に関しては見当たらず、推算に頼る以外にない。熱伝導率の推算のために、多くの手法が提案されているが、測定値がある場合、対応状態原理と組み合わせて使用するのが比較的信頼性が高いと考えられる。
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