加熱機としての冷凍サイクル
冷凍サイクルを加熱機として利用するいわゆるヒートポンプは、大気熱が再生可能エネルギとして取り上げられて注目されている。国内で生産されている設置型の空調機の大部分は冷暖房兼用ですでにヒートポンプとして使用されているが、ボイラー等の他の加熱源への代替が期待されている。しかし、大気熱は他の再生可能エネルギと異なり、有用なエネルギに変換するためには人為的なエネルギが必要となる。ここではヒートポンプの特性から加熱源としての有用性を考える。
熱機関とヒートポンプの関係を下図に示す。
図 熱機関とヒートポンプ
熱機関は温度T1の高温熱源から熱量QHを使用して動力Lを取り出し、温度T1の低温熱源に熱量QLを排熱するシステムである。一方、ヒートポンプは温度T1の低温熱源に熱量QLを動力Lを用いて温度T1の高温熱源の熱量QHに昇温するシステムである。ここで、熱機関、ヒートーポンプが理想的なカルノーサイクル、逆カルノーサイクルとすると、熱機関で取り出せる動力、およびヒートポンプでくみ上げられる熱量QH' は次式で算出できる。
L = QH ( T1 - T2 ) / T1
QH' = L' T1( T1 - T2 )
ここで、T1 = 2000K、T2 = 300K、QH = 1とすると動力Lは0.85となり、この動力をヒートポンプの駆動動力L'に用いるとQH'は1となり、熱機関に使用した同等の熱エネルギが得られる。理想的な熱機関とヒートポンプを組み合わせれば永久機関(第2種)が構成できる。
実際の熱機関、ヒートポンプでは各損失があり、永久機関は成立しない。熱機関の効率を火力発電所の平均値0.369、ヒートポンプの実サイクルとして効率を0.7とすると、ヒートポンプの温度とくみ上げ熱量の関係は下図で示される。
図 昇温温度と汲み上げ熱量
熱機関の効率を0.369にすると、熱機関に供給した熱量をヒートポンプでのくみ上げできる温度は475K(昇温幅175K)となり、理想的な熱機関の2000Kから著しく低下する。また、ヒートポンプの効率0.7では 404K(昇温幅104K)となる。エネルギ収支の面で見ると、大気熱を利用したヒートポンプでは給湯、空調のような100℃以下での利用が現実的である。
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