気液平衡計算
気液平衡条件
圧力P、温度Tで相平衡時には、GibbsエネルギGが最小になる。全モル数をn、1mol当たりの自由エネルギをgとすると気液平衡の条件は次式で表される。
多成分系の自由エネルギの変化を全微分で表示すると次式となる。
気液平衡時には温度、圧力が一定であるために、液相を「’」、気相を「’’」で表すと次式を得る。
ここで、気相のモル数の増加は液相のモル数の減少に等しいために式(3.3)は次式に書き改められる。
式(3.4)が常に成立するためには各成分iで次式が成立しなければならない。
式(3.5)の左辺、右辺の物理量は化学ポテンシャルμ とも呼ばれ、気液平衡時は、圧力、温度が一定で、各成分の化学ポテンシャルが気液で等しくなる。
気液平衡計算では、化学ポテンシャルの代わりに次式で定義されるフガシティとフガシティ係数を用いる。
気液平衡計算
気液計算には、露点、沸点の計算と二相内の特定点の二種類がある。これらの計算は蒸 留等で広く利用されており、特に三次元状態式を用いた計算手法は多くの文献が出されて いる。ここでは、一つの例として、系の組成と温度から沸点圧力の計算手法と系の組成と 温度、圧力から気液の組成の計算手法について記載する。これらの計算手法はHelmholtz 型状態 式にも適用できる。
・沸点圧力の計算
(1) 沸点温度T、系の組成 zi を与える。
(2) 沸点圧力Pb、気相のフガシティ係数fVi
を仮定。
系の蒸気圧式が不明の場合、沸点圧力の初期値として次式を用いる。
気相のフガシティ係数fVi はすべての組成で 1 あるいは 0.8 とおく。
(3) 液相組成 xi(=系の組成 <zi )、温度T、圧力Pb から液相のフガシティfLi を算出。
(4)液相のフガシティfLi 、気相のフガシティ係数fVi 、圧力Pb から気相組成 yiを算出。
(5) 気相組成 yi 、温度T、圧力Pb から気相のフガシティfVi を算出。
(6) Pb new = Pb + Δ P
とし、各組成のフガシティが気液で等しくなるまで(3)~(6) を繰り返す。
指数 pn は1とし、収束しない場合は小さくする。臨界点近傍を除き 0.5 ではほとんどの系で収束する。
・気液組成の計算
(1) 温度T、圧力P、系の組成 zi を与える。
(2) 気液平衡比Ki の仮定。
気液平衡比Ki の初期値は次式を用いる。
(3) 系の組成 zi 、気液平衡比 Kiから気相の割合 QV
を算出。
2成分の系
3成分以上の系
QV = 0.5 を初期値とし、Σ (xi - yi ) = 0 まで以下を繰り返す。
(4) 液相組成 xi 、気相組成 yiの算出。
(5) 液相組成xi 、温度T、圧力P から液相のフガシティfLi を算出。
(6) 気相組成 zi 、温度T、圧力P から気相のフガシティfVi を算出。
(7) Ki new= Ki ( fLi/fVi ) とし、各組成のフガシティが気液で等しくなるまで(3)~(9)を繰り返す。
気液平衡物性の近似式
気液平衡条件から物性を求める場合、繰り返し計算が多くなる。これを避けるために、開発ツールRCYCLEでは以下の近似式を用いている。 純物質では、気相、液相の物性は一定であるために必要となる気液平衡計算は蒸気圧のみである。蒸気圧の相関式は種々提案されているが、 三重点から臨界点まで高精度に相関するために次式を用いている。
ここに
Pr:対臨界圧力
Tr:対臨界温度
csi , ti:係数
混合物質の場合、気相、液相の組成が変化するために、乾き度と物性が直線関係にならない。このために、乾き度および液相、気相の密度、エンタルピ、エントロピを以下の式を用いている。
・乾き度
ここに
T':圧力P での沸点温度
T":圧力P での露点温度
Tr:対臨界温度
cxi, qi ,pi :係数
・液相の密度、エンタルピ、エントロピ
ここに
Xsl:液相の密度、エンタルピ、エントロピ
X':圧力P での沸点の密度、エンタルピ、エントロピ
cXli , qXli , pXli:係数
・気相の密度、エンタルピ、エントロピ
ここに
>Xsv:気相の密度、エンタルピ、エントロピ
X":圧力P での露点の密度、エンタルピ、エントロピ
cxvi , qxvi , pxvi:係数
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