熱力学的物性の推算

 冷凍サイクルの設計、評価には詳細な冷媒の物性値が不可欠である。冷凍サイクルの基本性能を表す、P-T-V-H-S以外にも、比熱、断熱指数等の熱力学的性質、さらに冷媒の圧力損失、伝熱特性の評価に粘度、熱伝導率の輸送的性質も必要となる。輸送的性質はそれぞれ測定値により式化する必要があるが、熱力学的特性は以下のデータがあれば関係式より算出できる。
 (1) 気液の両相に適用できる状態式
 (2) 理想気体状態の比熱
 単一冷媒では気相、液相の個別の状態式に加え蒸気圧曲線が分かれば、Clapyronの式により、熱力学的特性を算出できる。しかし、オゾン層保護から、冷媒の選択肢が少なくなり、混合冷媒が使用されるようになりClapyronの式が適用できなく、また、R744(CO2)を用いたヒートポンプ式給湯機のような遷臨界サイクルでは、気液両相に加え、超臨界域も含めた広範囲に適用できる状態式が必要となっている。気液両相に適用できる状態式としては、von der Waals型状態式、MBWR(modified-Benedict-Webb-Rubin)式が使用されてきた。von der Waals型状態式は構造が簡単でパラメータの数も少なく、化学工学の分野では広く使用されているが、液相の精度が低く、冷凍サイクルの詳細な評価には向かない。MBWR式はIEA-Annex18「環境許容冷媒の熱力学的特性」で一部の冷媒の状態式に採用されたが、現在では、他の熱力学的性質を算出するにあたり、積分が不要となり、関数の形態の自由度が高い、Helmholtzの自由エネルギを求めるHelmholtz型状態式が用いられており、冷媒の状態式の国際規格ISO-17584で採用されている。